猫がケンカをする理由

ケンカをしている2頭の猫
なぜ猫同士のケンカは起こってしまうのでしょうか。ケンカの原因は、猫の習性や性格によるものが多いとされています。
主な3つの理由を見ていきましょう。

縄張り争い

理由の1つ目は、縄張り(テリトリー)をめぐるケンカです。
猫は野生の名残で縄張り意識を持っており、ホームテリトリーと呼ばれる生活圏や、ハンティング・テリトリーと呼ばれる狩猟圏の範囲を決めています。
一般的にメス猫よりオス猫のほうが強い縄張り意識を持ちます。

ホームテリトリーは、猫が寝たりごはんを食べたりする、いわばプライベート空間です。ここに入ることを許されるのは飼い主と顔見知りの同居猫だけ。知らない猫が急に入ってくると「縄張りに入ってくるな!」と激しいケンカになります。

ハンティング・テリトリーはその名の通り、生きるための狩りをおこなう場であり、家で飼われている猫の場合は家全体が縄張りになります。
ホームテリトリーほどの強い意識はないものの、やはり知らない猫の侵入は許されません。侵入してきたほかの猫とケンカに発展することもしばしばです。

メス猫を巡った争い

発情期の野良猫が、大きい鳴き声を出して相手を求めているのを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

発情期のメス猫は、特有のフェロモンで複数のオス猫を引き寄せて争わせ、一番強いオスと交尾しようとします。
去勢をしていないオス猫の場合、繁殖期にはメス猫を求めて、去勢済みの猫の10倍までも縄張りを広げます。

そしてほかの猫と縄張りが重なり合うと、オス猫同士の争いに発展してしまうのです。子孫を残そうとする本能から、発情期のオス猫は通常時よりも気性が荒く、喧嘩っ早くなります。

相性の不一致

多頭飼いをしているとき、猫同士の相性の問題からケンカが起こるパターンです。
猫はもともと自分の縄張りの中で単独行動をする生き物で、室内飼いの場合は家の中すべてが縄張りです。

必然的にほかの猫と縄張りが被るので、スペースを共有することになりますが、相性がよくない猫同士だとケンカが起こってしまいます。猫同士の力関係がはっきりしない場合でも、ケンカが起こりがちになります。
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猫のケンカのルール

両手を上げている猫
猫のケンカを観察すると、一定のルールのもとに勝敗を決めていることが分かります。どのようにケンカをするのか、ルールと流れを見ていきましょう。

お互いの体格を見て相手の強さを見極める

猫の世界では、一般的に体が大きいほどケンカが強いとされます。
猫は勝ち目がないケンカに挑むようなことはほとんどありません。体格差による優劣がはっきりしている場合、弱い猫がふっと目を逸らし、ケンカを回避します。

にらみ合いが続き、激しく威嚇し合う

お互いに目を逸らすことなく、にらみ合いが続きます。
背中の毛を逆立てながら「ウーウー」「シャー」といった普段と違う荒々しい声を上げ、激しく威嚇します。

威嚇で相手が引かない場合、噛みつきや猫パンチからケンカに発展する

いよいよケンカがはじまるといったとき、どちらかの猫が先制攻撃を仕掛けます。首元をめがけて噛みつき、猫パンチやキックを繰り出します。
激しく揉み合い、取っ組み合いをするので、ケガをすることもしばしば……。

どちらかが反撃をやめると、ケンカも終了する

片方の猫がその場から逃げ出したり、うずくまって反撃しなくなったりしたら「参りました」のサインです。一方が降参した時点でケンカは終わります。

勝った猫はそれ以上の深追いはせずに静かに場を立ち去るのがルール。一度勝敗が決まれば、同じ猫同士で再びケンカになることはまずありません。

突然休戦してグルーミングを始めることも

ケンカ中に、片方の猫がいきなり毛づくろいをはじめることがあります。これは「転移行動」と呼ばれるもので、ケンカによる興奮状態を静めようとする行動です。

ケンカ中のグルーミングは劣勢の猫に多く見られ、「このままじゃ負けそうだな、どうしよう……」と焦る気持ちを落ち着けようとしているのです。

猫のケンカは仲裁すべき?

ケンカをしている2頭の子猫
猫同士が激しい取っ組み合いをはじめたとき、飼い主としてどうするのが正解なのでしょうか。

多頭飼いしている猫同士がケンカをしているときは、基本的にそのまま放置でOKです。
同居猫同士のケンカには、一度ぶつかり合うことで互いに優劣をつけ、関係を築く意味もあります。そして一度ケンカをした猫同士の再戦はほぼありません。
これを無理やり飼い主の手で止めてしまうと、かえって関係をこじらせてしまう可能性もあります。

ケンカと思っていたら、ただじゃれ合っているだけ、ということもあります。
仲がよい猫同士なら、噛んだり取っ組み合いをしたりしていても、おなかを見せたりごろんと転がったりするようであれば、「仲良く遊んでいる」という認識で問題ありません。

本気のケンカならば、どちらかがケガをするまで徹底的にやり合うため、じゃれ合いと違うことがはっきりと分かります。

もし猫がケンカでケガをしたら?

エリザベスカラーをつけているブルーの猫
ケンカのあとは、猫がケガをしていないか念入りに確認しましょう。たとえ小さなケガでも、感染症で気が付いたころには手遅れ……という可能性もあります。
ケガや出血が見られる場合は、次のような流れで適切に対処しましょう。

まずは落ち着かせてケガの程度を確認

ケンカ直後の猫は、落ち着きなく興奮が冷めきらない状態です。猫が平常心に戻るのを待ってから、猫に触れて傷を確かめます。

ケガの箇所を触ろうとすると、嫌がって暴れることもあります。猫を目の粗い洗濯ネットに入れるなどして、逃げ出さないようにしましょう。
ケガをしやすい顔周り、おしり周りはもちろん、毛をかき分けて全身くまなくケガのチェックをおこなってください。

傷口を洗い、消毒する

出血している傷口を見つけたら、応急処置をおこないます。
まずは傷口をぬるま湯で洗い、血や汚れを優しく拭き取ります。そして、猫用または獣医推奨の消毒液で傷を消毒してください。
目の周りをケガしている場合は、無理に消毒せず、濡らしたガーゼで軽く拭き取る程度に留めましょう。

止血する

傷口を消毒したら、ガーゼを押さえて止血します。手や足をケガしている場合は、ガーゼの上から包帯を巻き、しっかりと止血しましょう。出血が多い場合には、包帯をきつめに巻きます。

動脈からの出血(鮮紅血)の場合は、傷口より心臓に近い部分を固く巻き、固定してください。
静脈からの出血(暗紅血)の場合は、傷口の部分をしっかりと巻きましょう。

目などの顔周りを負傷したときには、エリザベスカラーを付けて傷口に触れないようにするのが効果的です。

動物病院に連れていく

出血が止まらない場合や、猫が暴れて応急処置が難しい場合、猫の様子がおかしい場合は、すぐ動物病院へ連れて行きましょう。
感染症や、深部に感染が及ぶおそれもあるため、早期の受診が推奨されます。

まとめ

じゃれ合っている子猫
猫のケンカの理由と対処法について解説しました。
ケンカは猫の社会化においても重要なことで、複数の猫で暮らしている場合、ある程度は仕方ない部分もあります。過激なケンカにより猫がケガをしないよう、飼い主として注意深く見守りましょう。
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